かかれもの(改訂版)

本や写真、現代思想の点綴とした覚書

2018-01-01から1年間の記事一覧

『ディアーナの水浴』失われたかがやきを求めて

『ディアーナの水浴』はピエール・クロソウスキー(Pierre Klossowski)によって著された、神話に関する注釈書です。 クロソウスキーは「ディアーナの水浴」の神話が後年の解釈によって戯画化、あるいは通俗化されてしまったといいます。この出来事は単なる…

続・枯尾花の時代

テクストにも枯尾花の時代*1があるのでしょうか。たとえそんな時代でも、私はテクストの幽霊を見続けていたいのです。 近親相姦的な料理本の世界では、盗作という概念は存在しないらしい。新たにローズマリーの小枝でもそろえれば、そのレシピは自分のものに…

影と写真と幽霊の交差

recrits.hatenablog.com 写真の映像 (芸術論叢書) 作者: ベルント・シュティーグラー,竹峰義和,柳橋大輔 出版社/メーカー: 月曜社 発売日: 2015/12/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る もしもタルボットが、すでに1827年に、すなわち彼…

いくつかの影人

ピーターパン “You really look like a shadow,” people said to him(Hans Christian Andersen: The Shadow) かげがり/ドラエモン 7月24日に発売された藤子・F・不二雄大全集『ドラえもん』第1巻に「かげがり」(「小学四年生」1971年7月号)という話が収…

五つのタイプの超テクスト性

ジェラール・ジュネット(Gérard Genette)は『物語のディスクール』をはじめとした、超テクスト性三部作*1*2を著した文学理論家です。間テクスト性という言葉と共に、文学の「読み」に大きな影響を与えました。 二十世紀半ば、文学における中心的な研究は作…

Project Xanadu キーワード

Project Xanaduに関する正統、正確な歴史について知りたい方は以下のエントリをおすすめします。Xanaduの基本思想、ZigZagとの関係、そして今まで作られてきたいくつかのデモの歴史的背景を知ることができます。 hackernoon.com キーワード Xanadoc EDL Xana…

Xanadu Basics

Youtubeのチャンネルで公開されている「Xanadu Basics」の視聴用ページを作成しました。

失速する読書(原=読者、間テクスト)

文学作品の評価、そこには評者の主観的な背景がつきまといます。一切の主観を放棄し、いわば神の視点からテクストを眺める「透明な読み」を、私たちは誰一人として心得ていないのです。 徹底して主観を排した文学批評、それがロシアに端を発するフォルマリズ…

点綴としたものを拾い集めるということ

てん てい【点綴】*1 点を打ったように,物がほどよく散らばること。また,散らばっている物をほどよく綴(つづ)り合わせること。てんてつ。てんせつ。 日常で使わない言葉を目にしたとき、ストンと腑に落ちることがあります。その一方で、いつまで経っても…

写真を巡る贈与

夏を満喫しよう!という召集にカメラマン役として参加しました。ファインダー越しに人を眺めていると、風景を撮るよりもポートレイトのほうが楽しいものだと実感します。翌日、写真をまとめて参加者に送ると、ひとしきり喜びの声が上がりました。こちらとて…

付箋、スナップ写真、Qui suis-je?(私は誰か?)

「どこかで読んだはずなんだけどなぁ……」と頭に残っている一節が、何の本の何頁に書かれていたか思い出せないことがあります。何冊か引っ張り出して、いきおい斜め読みをしたところで存外見つけられないものです。なぜ思い出せないのか、なぜ見つからないの…

マッチカットとしての夢

その1 おばさんと女性二人組 話ながら歩く 上司?に「タオル取って」 上司はキョトン おばさん、「女性は◯◯〔判読不能〕なのよ、取ってよ!」といいながら手でおもいっきり押しのける 押し退けた瞬間にカメラが切り替わる 若干古めの映像で後ろ姿で写される…

再び書かれた言葉について/もう一つの在り方

K・Sに捧げる 手書き文字はもとより、手書きの手紙を偏愛しています。これは近頃の電子化云々の流行に対する反発というよりも、自身の向きではないかと思っています。 手紙に限らず、手書きのメモもまた私の心を躍らせる作用があります。その場限りの走り書…

「つまらない」コラール

www.youtube.com 《食欲をそそらないコラール》 エリック・サティが「スポーツと気晴らし」(Sports et divertissements)におさめた冒頭の一曲です。 すっと耳に入る穏やかなコラールですが、その譜面の傍に奇抜な序文が掲げられています。ここにエリック・…