かかれもの(改訂版)

本や写真、現代思想の点綴とした覚書

写真

異様なほど細心な画家

言葉で何かを表すことに、一種のためらいを感じることがあります。言葉を尽くしてもそれが精確に描写されることはないだろう、と逡巡するのです。そこにあるのは崇高さでしょうか、卑小さでしょうか。 クロード・レヴィ=ストロースはブラジルでのフィールド…

重なった眼

dubble dubbleは、自分の写真と、世界の誰かの写真を多重露光するアプリです。決してカメラ揺籃期とは言えない現代において、多重露光(フォトモンタージュ)という遊戯は何を意味するのでしょう。未だ、偶然性がもたらす「おかしみ」の中に私達は生きていま…

影と写真と幽霊の交差

recrits.hatenablog.com 写真の映像 (芸術論叢書) 作者: ベルント・シュティーグラー,竹峰義和,柳橋大輔 出版社/メーカー: 月曜社 発売日: 2015/12/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る もしもタルボットが、すでに1827年に、すなわち彼…

写真を巡る贈与

夏を満喫しよう!という召集にカメラマン役として参加しました。ファインダー越しに人を眺めていると、風景を撮るよりもポートレイトのほうが楽しいものだと実感します。翌日、写真をまとめて参加者に送ると、ひとしきり喜びの声が上がりました。こちらとて…

付箋、スナップ写真、Qui suis-je?(私は誰か?)

「どこかで読んだはずなんだけどなぁ……」と頭に残っている一節が、何の本の何頁に書かれていたか思い出せないことがあります。何冊か引っ張り出して、いきおい斜め読みをしたところで存外見つけられないものです。なぜ思い出せないのか、なぜ見つからないの…

再び書かれた言葉について/もう一つの在り方

K・Sに捧げる 手書き文字はもとより、手書きの手紙を偏愛しています。これは近頃の電子化云々の流行に対する反発というよりも、自身の向きではないかと思っています。 手紙に限らず、手書きのメモもまた私の心を躍らせる作用があります。その場限りの走り書…